超個人的刑法総論レジュメ① (刑法及び刑法学の意義と機能)
※私はとある大学で刑法学を専攻しています。その際、刑法学を自分で勉強するために、自分で個人的なレジュメを作成しました。これを順次公開していきたいと思います。(誰得だよ!と自分でも思います。)
参考文献としては、松宮『刑法総論講義(第4版)』(成文堂、2009年)、山口『刑法総論(第2版)』(有斐閣、2007年)があります。版が最新のものではありませんので、アップグレードできていない部分があるかもしれません。ご了承ください。質問やご指摘がある場合は、コメントの方によろしくお願いします。
Unitごとに分かれていますが、Unitは松宮先生の教科書に準拠しています。
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第1章 刑法総論序説
Unit1 刑法及び刑法学の意義と機能
Ⅰ.刑法の定義
・刑法(広義、実質的意義の刑法):いかなる行為が犯罪であり、それに対していかなる刑罰が予定されているかを規定した法。
・刑法(狭義、形式的意義の刑法):「刑法」という名称の法律。刑法典。
※刑法(狭義)第1編総則の規定は特別の規定がある時を除いて、他の刑法(広義)にも適用される。(刑§8)
Ⅱ.刑罰論
1、刑罰の定義
犯罪に対する反作用、犯罪を遂行した者に対して科せられる制裁。
2、刑罰の種類
単独に言い渡すことのできる主刑と主刑と合わせてしか宣告できない付加刑に分かれる。
(1)主刑
主刑は生命刑、自由刑、財産刑に分かれる。
a.生命刑
→死刑。
b.自由刑
→懲役、禁錮、拘留。
拘留は30日未満の短期自由刑。懲役は刑務作業が科されるが、禁錮にはそれがない。
c.財産刑
→罰金、科料。
罰金は1万円以上、科料は1000円以上1万円未満の財産刑。
完納できない場合は労役場に留置される。
(2)付加刑
→没収、追徴。
犯罪生成物件、犯罪組成物件、犯罪取得物件、対価物件を没収する。犯罪取得物件、対価物件の全部または一部を没収できない場合はその価額を追徴できる。
3、刑罰の正当化根拠
?「刑罰はどういう理由でこの社会に存在しているのであろうか。」
(1)応報刑論
↳刑罰は犯罪に対する当然の報い、目的を持たない
→犯罪と刑罰の均衡
⇔目的のない害悪を存在させて良いか
(2)目的刑論
一般人を対象とした一般予防と犯罪者を対象とした特別予防がある。
a.一般予防
一般予防はさらに消極的なものと積極的なものに分かれる。
①消極的一般予防
↳刑罰を見せしめとして人々が罪を犯さないように威嚇する
②積極的一般予防
↳刑の予告、裁判での宣告によって人々の自律的な規範意識の維持または強化
⇔犯罪者を道具として扱っているのではないか
b.特別予防
↳刑罰を科すことで犯罪者の改善・教育をはかる
→執行猶予制度、仮釈放制度
⇔常習犯に対してのはるかに重い刑罰の正当化
再犯可能性のない犯罪者には重大犯罪であろうと刑罰を科せない
※通説:相対的応報刑論
↳応報刑論の範囲内で特別予防を考慮
Ⅲ.刑法の重要原則
刑法の任務は法益(法的な保護に値する利益)を保護すること
2、刑法の謙抑性
刑罰は最も厳しい法的制裁であるので、できる限り避けたほうが良い
→刑罰は他の法益保護手段では足りないときにのみ使用されるべき(刑法の補充性)で、刑法による保護の領域は包括的ではなく断片的なものでなければならない(刑法の断片性)
3、責任主義
犯罪には責任(=非難可能性)がなければならず、刑罰の程度もその行為の責任に見合ったものでなければならない
4、罪刑法定主義
Unit2で解説。